医療と介護

natsukihanazono027

年金問題に隠れる形で、同じ社会保障制度の枠内にあるにもかかわらず、医療・介護問題が隅に追いやられているのが気に掛かる。

いずれも財政再建という錦の御旗のもと、医療費抑制、介護給付抑制を強いられている。その一方で、質の高いサービスを求められ、医療・介護現場は混乱している。

安心感ある社会保障制度を維持していくには長期的視野に立った財政戦略が欠かせない。新たな国民負担にも触れるテーマではあるが、避けて通るわけにはいかない。

介護保険制度は社会全体で介護を支えようとの理念のもとに始まったはずだ。にもかかわらず、膨張する介護給付を抑制するために、国は在宅介護重視へとあっさり政策転換した。介護報酬は改定され、在宅介護は中重度者への報酬アップの代わりに利用者が多い軽度は減額された。これによって、多くの訪問介護事業者の収益悪化を招くことになってしまったのだ。

収入が介護報酬に限られる事業者が経営努力できるとすれば人件費削減しか手はない。だが、人材流出、人手不足、サービス低下という悪循環を招く。それを防ぐには他に収入源を求めるか、利用者獲得に突き進むしかない。コムスンの不正請求はこうした事情と無縁でないだろう。

今後、核家族化や共働きに歯止めがかかるとは思えない。そんな状況下で在宅重視の医療・介護が機能するのか疑問だ。在宅介護は家族の誰かが介護を担当することが必要だ。それは貴重な労働力が介護に固定化され、介護費用を稼ぐ労働力を結果的に奪ってしまうことになる。

事業者にとっても施設介護で可能だった効率的な医療・介護サービス提供が厳しくなる。将来に禍根を残さないためにも、サービスを受ける側、提供する側の実態をいま一度把握し、互いに無理のない仕組みを考える必要があろう。

医療・介護現場での人材不足は深刻だ。医師不足は、偏在の問題として取り上げられていたが、人口千人当たりの医師数で日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国の下位にあり、絶対数不足という認識に変化しつつある。

政府は地域によって医学部の定員増を認めたが、医師養成には長い時間が必要だ。半面、地方の小児科医、産科医不足には即効薬が求められている。医師養成という長期的取り組みと同時に、一定の強制力を伴った対策がなければ地方の医師不足解消は難しい。

当面の医師不足を克服する重要な鍵は出産などを機に離職した女性医師の復職支援策だろう。女性医師が働きやすい職場をつくれば、男性医師の負担も減るはずである。

昨年の診療報酬改定の結果、大病院が看護師を囲い込み、中小病院の看護師不足を招くという新たな問題も噴出している。介護職も低賃金による人材流出が止まらない。従事者の使命感に甘え、労働環境が改善されなければ医療・介護が現場から崩壊していくのは時間の問題だ。

だが、待遇改善には介護報酬、診療報酬の引き上げ、つまりは保険料の負担増に通じてしまう。昨年からの医療制度改革、介護保険料見直しで国民負担は増している。特に年金生活の高齢者は限界ぎりぎりだ。一方で、保険料未納者も増えているという現実もある。

医療・介護は誰もがかかわる問題だ。国、個人ともに厳しい財政の中、どう制度を再構築し、安心生活を確保するのか。各党には明確な改革ビジョンを示してもらいたい。

― posted by 大岩稔幸 at 10:23 pm commentComment [1]

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