エネルギー政策 

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 我が国のエネルギー政策にとっての長期的な課題は、二酸化炭素排出量の削減であり、化石燃料消費の削減と再生可能エネルギーへの転換にあります。ただし、再生可能エネルギーの利用拡大のために原子力発電の果たしている役割の大きさについても再認識する必要があるでしょう。

 ドイツ、デンマーク、スペインなどの欧州諸国では、電力供給における太陽光発電 や風力発電などの再生可能エネルギーの利用拡大が進んでいるとされます。特に、スペインは2008年には一時的に全電力需要に占める風力発電のシェアが4割を超えるなど、風力発電大国として知られています。もちろん、これは3月のイースター休暇の週末で電力消費量が少ない中で「瞬間風速」的に達成された記録ではありますが、 風力発電量自体もすでに2007年には水力発電量に並び、一次エネルギー供給の10%を占めるに至っています。

 しかし、ここから学ぶべき重要な点は、スペインが積み上げてきた風力発電の設備 容量の大きさそのものではなく、これほど供給量の振れの大きい風力発電などの再生可能エネルギーを電力源として取り入れながらも、安定した電力供給を可能としている電力マネジメントのノウハウと出力補償の調達源確保にあります。

 スペインで風力発電を手掛けているのがRed Electricaという送電網および電力システムの系統運営機関です。同社独自の風力発電量予測システムでは、人工衛星による天候情報を基にした3次元の解析モデルにより48時間以内の毎時の風力発電量予測を15分ごとに更新しており、測定誤差は24時間以内であれば20%以内とのことです。こうした予測プログラムを駆使して、発電量が許容量を上回る場合には各風力発電サイトの発電機を解列するなど対応する一方、瞬時の出力低下の際には、必要な出力の90%を確保する出力補償を行うことになっています。その際の電力の調達源となっているのがフランスからの買電です。

 このように風力や太陽光などの再生可能エネルギーの導入に当っては、柔軟な電力マネジメントが課題となりますが、スペインで柔軟な電力マネジメントが可能な背景には、隣国フランスが恒常的に余剰電力を抱えているという要因があります。フランスは電力の大部分を原子力発電でまかなっていますが、原子力発電は機動的な出力調整が難しい反面、発電の限界コストが低いため、余剰電力供給を常態としながら周辺 国への売電契約でコスト回収をはかるというフランス側の事情もあるようです。

 ドイツ、デンマーク、スペインなどでは再生可能エネルギー導入に熱心な一方、原発への反対が根強いとされています。こうした欧州のクリーンエナジー志向に対して 「フランス原発ただ乗り」批判があるのもこのためです。ただし、欧州地域全体として見れば、効率的なエネルギー利用が可能となっているのは事実です。

 原子力発電については、廃棄物の処理や廃炉などを含めたトータルでの運営コスト、 あるいは環境アセスメントや地域対策などの社会的コスト、さらには今回のような災害時の補償リスク負担まで含めて見た場合に、果たして安価なエネルギー源と言えるかは議論の余地があります。

 一方で、設備が稼動状態にあることを前提にしますと、極めて限界コストの低い電力を提供できると言う点からは、経済合理的な面から電力供給システムの効率的なマネジメントを達成する上では大きな影響力を持ちます。一般に、効率的な資源配分の 決定に影響するのはトータルでのコストを反映した平均コストではなく限界コストで あるためです。

 つまり、出力が不安定な風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギー導入は、 原子力発電のように限界コストが低く、かつ低炭素負荷の電源からの余剰電力供給の バックアップの存在が前提となって初めて採算性が成り立つと同時に、二酸化炭素排 出量の削減効果が期待されるといえます。

 ただし、原子力発電の推進が難しくなることも想定しますと、低炭素負荷なエネル ギー源の候補として天然ガスが注目されます。日本が天然ガスを利用する場合は、液化天然ガス(LNG)の形態での輸入に頼ることになりますが、今後調達を拡大する上では資源開発が課題となると考えられます。

 天然ガスの流通は世界的に見ますと、産出量の約7割以上は産出国から消費国へ直接パイプラインを経由して配送されており、LNGの形態で流通するのは約3割に過 ぎず、かつ日本がLNGの約3分の1を輸入するという偏った流通市場となっています。そのため、コモディティ価格が全般に上昇した昨年1年間でも、天然ガスの市場価格は2割以上も下落するなど、やや特異な動きとなっています。

 LNGの資源開発では、天然ガス田の探査開発に加えて、大規模なLNGの製造・ 輸出設備の建設が必要になるなど、一般の油田開発よりも大きなコストがかかるとされます。その一方で、LNGの流通市場での不透明な価格形成が産出国の開発インセ ンティブを損ねている面があります。そのため、日本にとっては産出国との2国間での緊密な協力関係の上に資源開発を進めていかざるを得ないのかもしれません。その場合、近隣の資源保有国である中国、ロシアとの関係も課題になると考えられます。

― posted by 大岩稔幸 at 12:27 am

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