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君子豹変

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 7月11日に、小沢新党が発足しました。党名は「国民の生活が第一」。「今の民主党は政権交代当時の民主党ではなくなった。政権交代の原点に立ち返った政策を国民に示す」という意気込みがこの党名になったようです。今の民主党が、政権交代当時の民主党でないのは、その通りでしょう。

 私は、2010年6月の菅政権の頃から、民主党は「変わった」と思います。沖縄の基地問題で迷走したこともさることながら、ギリシャ危機が最大のきっかけでした。「ギリシャは対岸の火事ではない」という大合唱を背に、財政再建が改めてクローズアップされました。 民主党代表選への出馬会見(2010年6月3日)で菅副総理・財務相(当時)は、 小沢氏について「しばらくは静かにしていただいたほうが本人にとっても、民主党にとっても、日本の政治にとってもいい」と言ったものです。

 今回の消費増税法案は、民・自・公の三党合意という超党派の議員の賛成を受け成立しました。一方、小沢氏は「静かに」するどころか、消費増税関連法案に反対したことから民主党を除籍されました。

 超党派というのは、ある意味で民主主義の否定です。菅政権から野田政権へ移行したものの、民主党は分裂してしまい、野田政権は自民党野田派と揶揄されています。

 君子豹変、小人面革(易経 沢火革の上六)と言われます。現在では本来の意味から離れて、トップやリーダーが気まぐれに自分の主義や主張をコロコロと変えることを言うようです。それはさておき、時代は確かに変革の時にきています。生き様を各自がそれぞれに考えねばならない時にきています。

― posted by 大岩稔幸 at 09:37 pm

タブーはこうして作られる

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三春滝桜(みはるたきざくら)は、福島県田村郡三春町大字滝字桜久保(地図)に所在する、樹齢推定1000年超のベニシダレザクラ(紅枝垂桜)の巨木。国の天然記念物。三春の滝桜、また単に滝桜とも呼ばれる。

 どんな国にも触れてはならない話題はある。これを禁忌と呼んだり、タブーと呼んだりする。

 タブーはポリネシア語で聖なるものを意味するtabooに語源があると言われ、本来は触れてはならない聖なるものや、その裏返しの触れてはならない穢れたもののことを指すものとされている。

 だから、本来タブーにはタブーたる由縁がある。しかし、日本の場合は本来の定義に当てはまるタブーは必ずしも多いわけではない。むしろ、もっと単純な、そしてやや恥ずかしい理由で、多くのタブーが生み出されているようだ。

 「タブーに挑戦する」をスローガンに数々のタブーに挑戦してきた雑誌『噂の真相』の副編集長として、文字通り数々のタブーに挑戦し、実際に右翼団体の襲撃も経験した川端幹人氏は、日本のタブーには暴力、権力、経済の3つのパターンがあり、これにメディアが屈した時にタブーが生まれていると言う。

 3・11以前は、原発がそんな日本的タブーの典型だった。川端氏は原発は先にあげた3つの類型の中では究極の経済的タブーだったと言う。地域独占を背景に電力会社が持つ絶大な経済力は、メディアもスポンサーも丸ごと飲み込んでいた。しかも、原発には年間1千億円を超える巨大な広告費などの絶大な経済力に加え、国策やエネルギー安全保障や核オプションといった、実態の見えない後ろ盾に支えられていると受け止められている面があり、電力会社側もメディアへの圧力にこれを最大限に利用した。結果として、原発を含む電力会社を批判することは、広告をベースに運営されるメディアにとっては、自殺行為以外の何物でもなかったと川端氏は言う。

 実際、東京電力がスポンサーをしていたテレビ番組を見ると、日テレ系「ズームイン!!SUPER」、「情報ライブ ミヤネ屋」、「news every.」「真相報道バンキシャ!」、TBS系「報道特集&ニュース」、「NEWS23クロス」、「みのもんたの朝ズバッ!」、フジ系「めざましテレビ」、テレ朝系「報道ステーション」、など、その手の問題を扱う可能性のある番組に集中していることがわかるが、それもこれも、1974年以降、電気事業連合会(電事連)の中に設けられた原子力広報専門委員会で練られたメディア戦略に基づいたメディア懐柔策だった。

 その他、電力会社のメディア操縦は、マスコミ関係者に投網をかけるように豪華接待攻勢をかけていたほか、マスコミ関係者の天下りの斡旋まで手を広げていたと川端氏は言う。

 また、電力会社は経済力の延長で、天下りなどを通じて政界、経済産業省、検察、警察との太いパイプも持ち、これもまたメディアに対する睨みを効かせていた。

 要するに原発タブーというのは、本来的な意味でのタブーでも何でもなく、単にメディア関係者が電力マネーによって根こそぎ買収され、それでも言うことを聞かないメディアには、訴訟を含めた強面の圧力をも持ってして押さえ込んだ結果に他ならなかったと、川端氏は言う。

 最近では経済タブーの筆頭にあげられるものが、AKB48に関連した不都合な情報だと言う川端氏は、こうした経済タブーの他にも、ある種の伝統的なタブーに近いと思われているタブーも、その実態はもう少し残念な状態にあるとして、自らを含めたメディアの姿勢を批判する。例えば、皇室や天皇制に関するテーマは多くの場合タブーとして扱われる場合が多い。

 これは一見、タブーの定義である「触れてはならない聖なるもの」かと思われがちだが、さにあらずと川端氏はこれも一蹴する。日本でメディアが皇室や天皇制を批判することを控える理由は、右翼の街宣攻撃や実際に危害を加えられることを恐れた結果であって、現にメディア上では皇室をタブーとして扱っているメディア関係者の多くが、私的な場や打ち合わせの場では、平然と天皇制を批判したり、皇族を馬鹿にしたような台詞をはいていると、川端氏は指摘する。

 実際、歴史的な経緯を見ても、戦後GHQの占領下では右翼の圧力を気にする必要がなかったために、皇室を揶揄したり批判する本や論説が多く登場した。しかし、1961年に雑誌『中央公論』が掲載した小説を理由に同社の社長宅が右翼青年に襲われ、お手伝いの女性が刺殺される「風流夢譚事件」などをきっかけに、皇族や天皇制を批判したり揶揄したりしたメディアに対する右翼の攻撃が日常化したために、皇室ネタはメディア上ではタブーとして扱われるようになったと川端氏は言う。

 右翼に襲われて怪我をして以来、自分の筆が鈍っていることを感じ、結果的に噂の真相の継続を断念するに至ったという川端氏と、本来はタブーでも何でもないテーマが、広告圧力や暴力による脅威によって封殺されている日本のタブーの現状を議論した。



プロフィール
川端 幹人
かわばた みきと
(ジャーナリスト・『噂の真相』元副編集長)
1959年和歌山県生まれ。82年中央大学法学部卒。
83年雑誌『噂の真相』編集部、85年同誌副編集長、
2004年、同誌休刊にともないフリーに。
著書に『タブーの正体』、共著に『Rの総括』『事件の真相!』など。

― posted by 大岩稔幸 at 10:59 pm

謹賀新年2012

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 新しい年を迎えるに当たりまして、ご挨拶を申し上げます。

 2011年は、医療界において実に様々な動きがあった1年でした。3月の東日本大震災や福島第一原発事故による医療機関の被災、その被災地への支援、被災地以外でも医薬品不足や電力不足に伴う診療制限に直面しました。

 6月末の社会保障と税一体改革成案の決定以降は、「すべての議論は、一体改革成案に通ず」という形で、受診時定額負担をはじめ、具体化のための議論が行われ、秋からはTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加問題も浮上。そして年末に、2012年度診療報酬の改定率が「ネットで0.004%プラス」に決定。最初、この数字を耳にした際は、小数点以下、ゼロが幾つ並ぶのか、聞き直したほどの小幅なアップですが…。

 2012年は、2011年に続いて様々な制度改革の議論が展開されることが予想され、医療界にとって重要な1年になると言えるでしょう。春には、6年に1回の診療報酬と介護報酬の同時改定があります。次期通常国会への提出を目指し、特定看護師(仮称)の制度化のための保助看法のほか、医療法や薬事法の改正法案などの準備が進められています。

 そのほか、長年の懸案と言える、医学部新設問題や“医療事故調”については、何らかの決着がつくのでしょうか。また、日本医師会の会長選挙も4月に控えています。

 もっとも、受診時定額負担に代表されるように、政府や厚生労働省が方針を打ち出しても、医療界の議論、あるいは世論でその方針は変わり得ます。その意味で、様々な動向を把握し、臨床現場の医療者が情報発信していく重要性が増しています。

【2012年に予定される医療界の主な動き】

◆医療提供体制
・医療法の改正(通常国会に改正法案を提出予定:急性期病床群(仮称)や臨床研究中核病院(仮称)の創設、医療計画の見直しなど)
・特定機能病院や地域医療支援病院の要件の見直し(年始から検討会設置予定)
・広告・情報提供のあり方の見直し(厚労省の検討会で議論中)

◆診療報酬、医療保険制度
・診療報酬と介護報酬の同時改定(2012年2月諮問・答申予定、4月実施)
・高額療養費制度の見直し(年間負担上限額の新設など)

◆医師、コメディカルの養成等
・医学部新設問題(文科省の検討会で議論中。1月15日まで意見募集中)
・特定看護師(仮称)の制度化(通常国会に保助看法改正案を提出予定)
・診療放射線技師の業務範囲の拡大(検査関連行為と核医学検査を追加)
・チーム医療の推進(厚労省の検討会で議論中)
・専門医制度の確立(厚労省の検討会で議論中)

◆医療事故関係
・無過失補償制度、“医療事故調”の検討(厚労省の検討会で議論中)
・死因究明制度の確立(警察庁が、通常国会に死因究明適正化法案(仮称)を提出予定)

◆医薬品の関係
・薬事法等の改正(通常国会に改正法案を提出予定:添付文書の法的位置づけの見直し、薬務行政を評価・監視する第三者組織の設置など)
・臨床研究中核病院(仮称)の制度化(通常国会に医療法の改正法案を提出予定)
・抗がん剤の健康被害の救済制度の検討(厚労省の検討会で議論中)
・企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドラインの実施(2012年度分から公開の対象に)

― posted by 大岩稔幸 at 08:33 am

第4の革命

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1.世界の平均
 日本学術会議は、福島第一原子力発電所の事故を受けて、今後の原子力政策について以下の4つの選択肢を提示しました。

第1は、原発を即時全面停止して火力などで代替する。
第2は、5年程度で原発分の 電力を自然エネルギーと省エネで代替する。
第3は、20年程度で原発分の電力を自然エネルギーで代替する。
第4は、安全な原子炉をつくり、将来も原子力を重要な エネルギーとして位置付ける。

 今後の原子力政策に対する世論は百家争鳴ですが、自然エネルギー、再生可能エ ネルギーの技術や実用性、利用率を高めていくこと自体の有意性は、誰も否定できないでしょう。

 再生可能エネルギーには2種類あります。ひとつは、水力、風力、太陽光、太陽 熱、地熱、潮力、波力などの自然エネルギー。石油や石炭などの化石燃料は、燃やしてしまったら再生はできません。

 もうひとつは、生ゴミや廃熱、植物から作ったバイオ燃料(バイオマス)などを 利用するリサイクルエネルギー。両者を総称して再生可能エネルギーと言います。

 日本の発電量に占める再生可能エネルギーの割合は、水力を除くと僅か1%。脱原発を決めたドイツは、自然エネルギーが17%を占めています。

 風力の発電量に占める割合は、日本では0.3%。風車と言えばデンマーク。そのデンマークでは風力が24.9%を占めており、さすがという感じです。因みに、欧州 は全体に風力に熱心に取り組んでおり、欧州連合(EU)の平均は5.3%。

 再生可能エネルギーへの取り組みが欧州に比べると遅れていた米国も、偶然ですが、福島第一原子力発電所事故の直前に方針転換。

 今年1月の一般教書演説で、オバマ大統領は2035年までに電力の80%をクリーンエ ネルギーにすると表明しました。米国は実現力、実行力の高い国ですから、きっと達成することでしょう。

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が5月に公表したレポートによると、2008 年の世界全体のエネルギーの約13%(水力を含む)が自然エネルギー。今後、各 国が政策的に自然エネルギーを推進することによって、2050年には77%まで高めることが可能としています。

 日本としても、世界の平均並みの水準は最低限実現しなくてはなりません。というよりも、地震国であり、唯一の被爆国であり、今回の事故を経験した国としては、世界の平均以上の努力をするのは当然と言えるでしょう。

2.潮力発電
かつて日本の発電の中心であった水力は、自然エネルギーの代表です。しかし、2009年度の水力発電(大・中規模分)は769億kWh。全発電量が9551kWhなので、全体の約8%にすぎません。

 もっとダムを造って水力の割合を高めたらどうかという意見もありますが、大規模ダムの好適地は少なく、建設コストを考えた財政負担、ダム建設による自然破壊等を考えると、なかなか難しいようです。

 しかし、水は川だけではありません。海もあります。そこで注目されるのが潮流を活用した潮力発電。

 潮流はまさしく潮(しお)の流れ。「海の中を流れる川」というイメージです。 潮流よりも、さらに安定的で強い流れが得られるのが海流。年間を通して同じ方向に数ノットから10ノット近くの早さで流れます。

 海の中の潮流・海流はまさしく「川」です。流れに逆らって泳ぐことは困難であり、時に「激流」と言えるほどの流れもあります。だからこそ、時々事故も起きます。

 潮力発電は、潮流・海流のある海域に発電設備を内蔵した支柱を投入。その支柱 にプロペラ型タービンを敷設し、潮流・海流によってプロペラが回るという仕組 みです。1本の支柱にタービンを複数つけることも可能です。 風と違って潮流・海流は安定的で絶えることがありません。風車のように止まることはなく、プロペラは回り続けます。

 日本は四方を海に囲まれており、南からは黒潮と対馬海流、北からは親潮とリマン海流。360度、どこの海に投入しても潮力発電が可能です。 エネルギーを電力に変える転換効率で比較すると、風力は12%、太陽光は18%、 水力(河川、潮流)は75%であるのに対し、海流はほぼ100%と言われています。

 四方を海に囲まれた日本にとって、潮力発電の潜在的可能性は極めて高いと思います。潮力発電に関して日本企業が保有している技術を、既に欧米諸国が獲得に動いています。やがては中国も動くでしょう。将来有望な日本の技術の海外流出を防がなくてはなりません。

 素人的な思いつきですが、潮力発電用の海中投入支柱の上に洋上風力発電の風車を併設すれば、風力発電と潮力発電を同時に行うことも可能です。

 技術的に困難な点は多々あると思います。困難な点を挙げて諦めるのではなく、 困難な点を乗り越える努力が日本に求められています。

3.第4の革命
 再生可能エネルギー、自然エネルギーの割合を高めていくことを、誰が担うかと いうことも問題です。つまり、電力会社が行うのか、電力会社以外が行うのか、あるいは両者が共同して行うのか。

 電力会社に再生可能エネルギーによる発電を義務づけるのはRPS(Renewables Portfolio Standard)制度。「再生可能エネルギーの利用割合の基準」を設けるという意味です。

 1970年代のオイルショックを契機とした火力発電(石油)依存への危機感、原子力発電所の建設困難化、国際的な地球温暖化対策のための温室効果ガス(二酸化 炭素など)排出規制強化が進む中、2002年に「電気事業者による新エネルギー等 の利用に関する特別措置法(RPS法)」が成立し、2003年から施行されました。

 一方、電力会社以外が発電した電力を、電力会社が普通の電気料金より高い価格で買い取るのがFIT (Feed In Tariff)またはFIL(Feed In Law)制度。

 エネルギーの買い取り価格(タリフ)を法律で定める制度であり、固定価格買取制度、MPS(Minimum Price Standard)制度、電力買取補償制度とも呼ばれます。

 米国では多くの州でRPS制度が導入されている一方、再生可能エネルギーの利用が 進んでいる欧州ではFIT制度を採用しています。 日本ではRPS制度が2003年から導入されましたが、義務量が少なく、再生可能エネ ルギーの利用は伸び悩み気味。そこで、2009年からは住宅太陽光発電の余剰分についてはFIT制度に変更されました。

 現在国会で審議されている再生エネルギー特措法は、2012年から電力会社に対して、現在の住宅太陽光に加え、企業による太陽光、風力、地熱、バイオマスなど による発電電力の全量買い取りを義務づけます。

 電力会社が固定価格で買い取った電力のコストは、電力会社の電気料金に上乗せされるため、再生可能エネルギーのコストは全国民で負担することになります。

 自宅で太陽光発電に取り組んでいる人は、電気料金が値上がりしても、余剰分の買い取り対価で相殺できますので、家庭での再生エネルギーの取り組みにインセンティブが湧きます。企業も同じです。そういう意味では合理的な政策と言えるでしょう。

 自然エネルギー、再生可能エネルギーによる発電は、電気、動力エンジン(鉄道、 自動車)、ITに次ぐ「第4の革命」と呼ばれています。
 日本は「第2の革命」である動力エンジンの分野では世界を席巻しました。日本経済の再生と復活のためには、「第4の革命」でも世界をリードすることが必要です。

 現状では先頭グループに引き離されています。先頭グループをキャッチアップし、 新興国に追い抜かれないように、政官財学の各界が一致結束して取り組まなくてはなりません。今なら間に合います。

― posted by 大岩稔幸 at 05:34 pm

エネルギー政策 

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 我が国のエネルギー政策にとっての長期的な課題は、二酸化炭素排出量の削減であり、化石燃料消費の削減と再生可能エネルギーへの転換にあります。ただし、再生可能エネルギーの利用拡大のために原子力発電の果たしている役割の大きさについても再認識する必要があるでしょう。

 ドイツ、デンマーク、スペインなどの欧州諸国では、電力供給における太陽光発電 や風力発電などの再生可能エネルギーの利用拡大が進んでいるとされます。特に、スペインは2008年には一時的に全電力需要に占める風力発電のシェアが4割を超えるなど、風力発電大国として知られています。もちろん、これは3月のイースター休暇の週末で電力消費量が少ない中で「瞬間風速」的に達成された記録ではありますが、 風力発電量自体もすでに2007年には水力発電量に並び、一次エネルギー供給の10%を占めるに至っています。

 しかし、ここから学ぶべき重要な点は、スペインが積み上げてきた風力発電の設備 容量の大きさそのものではなく、これほど供給量の振れの大きい風力発電などの再生可能エネルギーを電力源として取り入れながらも、安定した電力供給を可能としている電力マネジメントのノウハウと出力補償の調達源確保にあります。

 スペインで風力発電を手掛けているのがRed Electricaという送電網および電力システムの系統運営機関です。同社独自の風力発電量予測システムでは、人工衛星による天候情報を基にした3次元の解析モデルにより48時間以内の毎時の風力発電量予測を15分ごとに更新しており、測定誤差は24時間以内であれば20%以内とのことです。こうした予測プログラムを駆使して、発電量が許容量を上回る場合には各風力発電サイトの発電機を解列するなど対応する一方、瞬時の出力低下の際には、必要な出力の90%を確保する出力補償を行うことになっています。その際の電力の調達源となっているのがフランスからの買電です。

 このように風力や太陽光などの再生可能エネルギーの導入に当っては、柔軟な電力マネジメントが課題となりますが、スペインで柔軟な電力マネジメントが可能な背景には、隣国フランスが恒常的に余剰電力を抱えているという要因があります。フランスは電力の大部分を原子力発電でまかなっていますが、原子力発電は機動的な出力調整が難しい反面、発電の限界コストが低いため、余剰電力供給を常態としながら周辺 国への売電契約でコスト回収をはかるというフランス側の事情もあるようです。

 ドイツ、デンマーク、スペインなどでは再生可能エネルギー導入に熱心な一方、原発への反対が根強いとされています。こうした欧州のクリーンエナジー志向に対して 「フランス原発ただ乗り」批判があるのもこのためです。ただし、欧州地域全体として見れば、効率的なエネルギー利用が可能となっているのは事実です。

 原子力発電については、廃棄物の処理や廃炉などを含めたトータルでの運営コスト、 あるいは環境アセスメントや地域対策などの社会的コスト、さらには今回のような災害時の補償リスク負担まで含めて見た場合に、果たして安価なエネルギー源と言えるかは議論の余地があります。

 一方で、設備が稼動状態にあることを前提にしますと、極めて限界コストの低い電力を提供できると言う点からは、経済合理的な面から電力供給システムの効率的なマネジメントを達成する上では大きな影響力を持ちます。一般に、効率的な資源配分の 決定に影響するのはトータルでのコストを反映した平均コストではなく限界コストで あるためです。

 つまり、出力が不安定な風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギー導入は、 原子力発電のように限界コストが低く、かつ低炭素負荷の電源からの余剰電力供給の バックアップの存在が前提となって初めて採算性が成り立つと同時に、二酸化炭素排 出量の削減効果が期待されるといえます。

 ただし、原子力発電の推進が難しくなることも想定しますと、低炭素負荷なエネル ギー源の候補として天然ガスが注目されます。日本が天然ガスを利用する場合は、液化天然ガス(LNG)の形態での輸入に頼ることになりますが、今後調達を拡大する上では資源開発が課題となると考えられます。

 天然ガスの流通は世界的に見ますと、産出量の約7割以上は産出国から消費国へ直接パイプラインを経由して配送されており、LNGの形態で流通するのは約3割に過 ぎず、かつ日本がLNGの約3分の1を輸入するという偏った流通市場となっています。そのため、コモディティ価格が全般に上昇した昨年1年間でも、天然ガスの市場価格は2割以上も下落するなど、やや特異な動きとなっています。

 LNGの資源開発では、天然ガス田の探査開発に加えて、大規模なLNGの製造・ 輸出設備の建設が必要になるなど、一般の油田開発よりも大きなコストがかかるとされます。その一方で、LNGの流通市場での不透明な価格形成が産出国の開発インセ ンティブを損ねている面があります。そのため、日本にとっては産出国との2国間での緊密な協力関係の上に資源開発を進めていかざるを得ないのかもしれません。その場合、近隣の資源保有国である中国、ロシアとの関係も課題になると考えられます。

― posted by 大岩稔幸 at 12:27 am

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