なまけ病・ずる休み

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 「いじめ」問題と並んで、連日、テレビや新聞で取り上げられる「会社員のうつ病」。どの企業や組織でも「うつ病」など心の病で長期休職する人が増えており、その多くが30代、40代の中堅なのだという。

 しかも、最近、そうやって休職する人たちの“休み方”が問題になっている。時代とともに「うつ病」のスタイルも変わりつつあり、「仕事はできないが、生活や娯楽ならなんとか」という場面選択型の症状を呈する人が増えている。主治医としても、少しでも元気が出てきた人には、リハビリのために運動や旅行をすすめることもある。

 しかし、休職した人の分まで仕事をこなしている社員にとっては、スポーツや温泉には出かける同僚の姿は到底、納得いかないものであろう。私のところにも上司たちからこんな相談が相次いでいる。「うつ病の人に『がんばれ』って言ってはいけない、というのはよくわかっているのですが、『テニスには行けるけれど仕事のことを考えるだけで動悸(どうき)がする』と休み続けている日焼けした顔の部下には、『がんばって出てこいよ、みんな待ってるから』と言いたくなるんです。でもやっぱり、『ゆっくり休めよ』と言うしかないんでしょうか」

 個人的な見解だが、「新しいうつ病」の人たちには、ときとして「がんばれ」「そろそろ仕事に来てみないか」といった叱咤(しった)激励も必要なのではないか、と思っている。彼らの多くは、自分の能力が会社で適切に生かされていない、努力が報われないという不満感、挫折感を抱き、プライドが傷ついて自信を失っている。彼らには、抗うつ薬や休養だけではなく、上司や同僚から「待ってるよ」と差し伸べられる手も必要なのだ。

 休職中の彼らにも“発想の転換”が必要だ。人生も仕事もままならないもので、理想どおりにはいかない。でも、失敗したり損をしたり落ち込んだり、というのもまた、人生の面白みである。「いいじゃないか、すべてが思ったとおりに行かなくたって」と肩の力を抜くことが、回復につながることも少なくない。

 まわりから自分がどう評価されているか、きらわれていないか、と対人関係に繊細な現代人に特有な「新しいうつ病」。復職を支援するためにミーティングやリハビリなど独自のプログラムを提供する病院も増えてきた。実は私も、いま勤務しているクリニックでプログラムを考案中。はたしてこの復職支援プログラム、休養、薬に続くうつ病の“第三の特効薬”になるだろうか。

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香山リカのココロの万華鏡:うつ病「第三の特効薬」

― posted by 大岩稔幸 at 11:29 pm

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