「この季節が一番嫌。4月からも教壇に立てるかどうか…。気もそぞろにな
る」。民間企業で賃上げ交渉が始まる2月から3月。さいたま市立の小学校の臨時教員、加藤貞子さん(53)は毎年不安にさいなまれる。契約の更新時期だからだ。
公立校に勤めながら一昨年8月から生活保護を受ける。時給1210円で1日5時間の勤務。月収8万〜10万円、夏休みなどがあり、年収は80万円にも満たない。
これまで小中学校17校に勤務。常勤の時は20数万円の月収があったが、2004年から非常勤に切り替えられ、月収は半減した。生活のためスーパーでアルバイトをしたこともあったが、疲れから翌日の授業がおろそかになり断念。「貯金を食いつぶして教員を続けてきた」と振り返る。
短時間勤務でも教材研究や授業の準備と、仕事は5時間では終わらない。「子供が相手の教師は人間性が試される仕事。続けていきたい。せめて安心して生活できる保障をしてほしい」と言う。
働いても生活が楽にならないワーキングプア(働く貧困層)が社会問題化している。パートや派遣など、非正社員の人たちに多いとされる。
首都圏に住む男性(42)は、倉庫で荷物を運ぶ仕事や清掃業が大半の「スポット派遣」で働く。日々異なる単純労働。かつての「日雇い」と同じだ。「一日倉庫で重いものを散々運んで手取りは6000〜7000円。バブルのころは一万円前後だったらしいですけど」
月収は10万円前後で、健康保険料や年金保険料は納めていない。アパートの家賃の支払いが滞ることも。転職の合間を埋める一時的な仕事のつもりだったが、正社員の働き口がなく、やむなく続けている。「年ごとに将来に不安を感じる」とつぶやくが、脱出口は見つからない。
「車を買うとか、結婚も考えられない。夢も希望もない」とこぼすのは電機メーカーの工場に契約社員として勤める東京都内の男性(47)。月収の手取りは約10万円。独身で、会社の寮に住む。
これまでは派遣社員として工場などを転々としてきた。「派遣や契約という不安定な働き方を、国はもっと規制すべきだ」と憤りをぶつけた。
ワーキングプア
長時間働いても生活保護水準程度の収入しか得られない人たち。400万人とも600万人ともいわれる。バブル崩壊後の不況期に企業が人件費削減のためパートや派遣社員ら非正規雇用を拡大した結果、増加したとされる。
2007年3月3日
高知新聞夕刊
働く現場から
07年春闘の焦点
働けど年収80万円
「せめて生活の保障を」
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